レトロなハイブリット技術でも無いよりマシ? [車]

なんだか巷では「ハイブリットカー」が先進的なエコ技術ともてはやされているが、ある意味失笑を禁じえない。
ちなみにトヨタの「プリウス」もホンダの「インサイト」も、エンジン単体では、乱暴な話、燃焼したエネルギーの3割程度しか使っておらず、残りは大半が「熱」として放出してしまっている。
では、電気はどうやって発電しているかといえば、その3割のエネルギーで取り出したエンジンの回転力と、減速や停止する為に必要な力を「発電」する事で得ている。
これは「電力回生ブレーキ」とか発電ブレーキ」と呼ばれるものだ。

鉄道にチョッとでも関心のある人なら、「なんだ、電車には昔から装備されているシステムじゃないか」と思われるだろう。
日本においては、なんと昭和の初期の電車から既にあるシステムで、基本的は構造は「レトロ」といっても差し支えないかもしれない。

まあ先進的といってもその程度の物で、本来なら熱や機械的損失で奪われる約7割のエネルギーを活用できれば、乱暴な話、燃費はもっと向上するはずだ。

で、そういう技術が無いのかといえば、そんな事は無い。
一つは、排気ガスのエネルギーの回収で「なんだ、ターボなら今でも有るだろう」というのは早とちりで、現在のターボは、エンジンに強制的に空気を詰め込む事に使われるのだが、詳細は省くがそれだけではたいした燃費の向上は望めない。

本当なら、ターボで回収したエネルギーを、直接動力として取り出し、走行のアシストに出来ればかなりの燃費向上になるはずだ。
一つは減速機を通して十数万回転あるターボの高回転を走行に使える回転数に落として動力に使う方法で、これまた「ターボコンパウンドエンジン」と言って、トルクコンバーターを通して動力を混合する仕組みが、航空機用として1950年代には実用化されている。
だが静止から高回転まで回転数が激しく変化する自動車には使えるものではない。

もう一つはターボを使って発電をして、動力に使うもので、一見現実性が高そうだが、ある専門化に言わせるとターボの高回転に耐えられる発電機が無いのだそうだ。

ところが現実には航空機はタービン機関の一つである「ジェットエンジン」用の発電機が存在しており、どんなジェット機にもそれこそ60年前くらいから備わっている。

多分問題は、そのサイズと、ほとんど「コスト」にあるはずで、それこそ300万円で売る車には付ける事が出来ないということなのだろう。

更に捨てられる熱を使う方法もあり、一部では廃棄の熱で蒸気を作り、発電機を回すなんて方法も考えられており、これは船舶用の大きいエンジンでは成立する技術だそうだ。
また熱そのものを電気に変換する「サーマルセル(熱電池)」と言う物もある。
これまたそんな最近の技術ではなく、1960年代辺りから、主に原子力を動力とした人工衛星に使われていた既存の技術だ。
この技術も最近では民生用に、少ない熱源でも十分な発電量があり、尚且つコストの安いものが出始めていると聞く。

と言う事で、量産して商売をするという前提ではなく、既存のガソリンエンジンでも、工夫次第ではまだまだ改善の余地があるはずなのだが、そういった開発を進めていますと言う発表は、どの自動車メーカーからも「表向きには」聞こえてくる事が無い。

本当にしていないのか、隠しているのかは解らないが、ここ10年くらいの自動車メーカーの動向を見ると「とりあえず儲かる為の目先の技術」にしか目が行っていなかったような気がする。
まあ、その典型的な例がアメリカの「ビック3」だったと言うわけだったのだろう。

記憶が定かではないが、1990年代中ごろの東京モーターショウで、国内の各メーカーがやれRVだのスポーツカーだの浮かれて、裸のような布の少ない衣服を着させたオネエチャンをストリップモドキに躍らせて、客引きをして悦に行っていたが、現在の金儲けの権化のダイムラーになる前の良心的な「メルセデスベンツ」のブースでは、その時何処も見向きもしなかった環境技術として燃料電池のデモカーとその周辺技術や思想に関する展示を真面目にやっていたのが今でも思い出される。

実は80年代中ごろから90年代初頭は、ヨーロッパで環境問題の高まりから、排気ガスの削減、燃費向上技術、次世代燃料の開発などが盛んになっていて、航空機なども燃費の削減や新世代のプロペラエンジンの開発などが盛んになったのだが、その後のアメリカを中心としたITバブルや、投資バブルに浮かされて、「より大きく、より豪華に、より早く」を追及していき、600万台クラブなどと、数の論理がまかり通り、飽くなき肥大化の道に突き進んでしまったのが現実で、今まさにその「失われた10年」のツケが一気に来ているのではと言う感慨が深い。

未曾有の経済危機で、明日をも知れぬ現状に、各メーカーは恐怖のあまり萎縮しきっており、大切な人材をも切り捨てて、御身の保身を考えるようなケツの穴の小さな経営者があまりにも多いが、過去の環境技術開発で蓄積した技術や人材は、確実に「財産」としてあるはずであり、今こそ万難を排して次世代の自動車を開発して世に送り出そうと言う「気概」が無いくらいでは、この難局は乗り切れないのではないだろうか。

関係者は激怒するだろうが、「チンケな技術」であろうが、とりあえずあの程度のハイブリットカーで食いつなげられるのなら、それに越した事は無いので、いち早く世界に次世代の「地球と共存できる新時代の自動車」を開発して、一般庶民の下に送り出して欲しいと僕は切に願っている。


nice!(0)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:自動車

nice! 0

コメント 2

NO NAME

「エンジン単体では、乱暴な話、燃焼したエネルギーの3割程度しか使っておらず、残りは大半が「熱」として放出してしまっている。」
と言っても 普通のエンジン車は遥かに低い効率の所しか使っていないからな 3割なんてほぼ最高効率だ
だから ハイブリットはそれなりに意味はある
by NO NAME (2009-03-11 20:42) 

戦闘班長

エンジン単体では両車とも3割は絶対に無いはずですよね。
回生エネルギー込みでどの位の効率になるのでしょうか?

NO MANE(HNでも名乗られたら?)さんは専門家のようですから、ご存知でしたら是非教えてほしいですね。

レトロは言いすぎでしたか?、でも20世紀初頭に実用化された近代的な潜水艦でさえガソリンエンジンとバッテリーのハイブリットでしたしネェ。

エネルギー効率や今後の発展性(電気自動車や燃料電池車への移行等)を考えると、シリーズ/パラレルなどの方式も含めて、特にインサイトのIMAシステムの場合、未来が見えてこないのが残念なんです。

プリウスにしても、あそこまで高価で複雑なシステムを擁してまで、本当に今後ともガソリンエンジンに拘る必要があるのかな?と。

そういった意味で「暫定的」と評しました。

NO NAMEさんの仰るとおり、確かに「それなり」の価値はあると思います。

でも「それ以上」でも無いのではとも思います。

by 戦闘班長 (2009-03-12 21:37) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。