団塊世代狙い撃ち!、トヨタプレミオ、アリオン。トヨタの実力に脱帽! [車]


もはや開いた口がふさがらないと言うべきか。

いや、否定しているわけではなく、ここまで狙ったマーケティングに対して商品力のある車を見事に作り出せるトヨタの底力に対して、感嘆するしかないからだ。

もともと「コロナ」の後継車として先代から今の名前を名乗っているが、そもそもこのクラスは日産の「ブルーバード」と「BC戦争」なる乗用車の覇権を争っていた。

高度経済成長当時、ごく一般的な家庭が、多少ゆとりのあるマイカーを選ぼうとしたとき、コロナやブルーバード、カペラ、ギャラン、アコードなどは、大衆車としてはベーシックなクラス(カローラ、サニー)より格が上で、大きさ、装備、性能に比較的余裕のあるクラスの車だった。

サラリーマン的な、会社内の身分から言えば、係長ぐらいの年齢と収入の人が、乗る事を許されると言えば判りやすいだろうか。

そして、課長あたりから部長辺りが「マークⅡ」や「ローレル」で、取締役辺りになると「いつかはクラウン」となり、経営者にのし上がると、運転手付きの「センチュリー」が待ち構えていた。

こういう身分によって自家用車が制限されていたと言う事実は、我々の世代より若い世代には理解できない「慣習」で、今となっては免許取立ての18歳のアンチャンが、中古の「セルシオ」を平気で乗り回す感覚は、逆に我々から上の年代の世代にはまったく理解できない。

プレミオやアリオンは、まさにそういった世代をターゲットに開発された車であり、トヨタの販売戦略の中で、明確に開発方針が定まっており、それに忠実に企画され、デザインされ、開発された。

ここからは僕の想像だが、ターゲットになるユーザーの代表的な姿は、50~60代で、子供が大学生や、成人していて、退職寸前かリタイヤしている。

昔、「いつかはクラウン」を夢見ていて、高級セダンに憧れがあり、バブル期には白い「マークⅡ」までには乗れたが、家族のためにワゴンかミニバンを不承不承10年くらい乗っていた。

やれやれ、子供たちにも手がかからなくなり、大きな車も必要がなくなったので、本当は若き日の憧れの「クラウン」や「レクサス」、あわよくばベンツかBMWが欲しいところだが、大学生の子供に仕送りも有るし、自分の老後に備えて貯蓄や個人年金も必要になる。

と成ると、必然的に大きくて税金やガソリン代のかかる車は乗れない、しかも、老いて反射神経が鈍っているので、できれば取り回しの良い車が良い。

であれば、「ヴィッツ」や「フィツト」にすればよいのに、余裕のある走行性能と「見栄」は張りたい。

そんなお父さんの我侭な希望を満遍なく適えようとすると、いや絶妙に作りこまれた車が「プレミオ、アリオン」と言えるのではないだろうか。

まあ、少なくともホンダにはこういう芸当は絶対に出来ないだろうし、日産は基本的ロジックを真似て、多少方向性を変えて「ブルーバードシルフィー」などは出せるようだ。

この車を見ると、あらゆるところにトヨタの確信犯的計算が一部の隙も無く散りばめられていて、当たりばったりで、思いつきで作られた(これはホンダの得意技(笑))部分がまったく無い。

エクステリア、インテリア、装備、走行性能など、ターゲットとするお父さん達が乗って、不満が出るようなことは絶対に無いだろう。

これならトヨタの販売力も合わせて、安定的なセールスが期待できるわけだ。

ただし、「車」として見ると、気になる部分がある。

先代のプレミオで、高速道路を乗ったことのある人に聞いたが、後席に乗っている人が必ず「車酔い」を起こしてしまったそうだ。

もちろん個人差はあるが、その家族が以前乗っていたホンダのセダンでは一度もそういうことは無く、不思議な事だと言っていた。

実は是には訳があり、プレミオは、セダンでありながらワゴンの使い方を売りにするために、後部座席が倒れてトランクルームとつながるようになっており(新型も)、後輪の軸周りの横の捩れに対する強度が低く、判りやすく言えば、車が常に捩れながら揺れている様に走っている。

是では、特に後席の人は、頭が横に揺らされているので、車に酔ってしまうのは、当然の事である。

だが、80kmあたりで一般道を走行するか、高速でも100km辺りで走る分には判りにくく、日本人の一般的な走行パターンではほとんど判らないことを、トヨタは知っていて作っている「確信犯」なのだ。

ちなみに「衝突安全性」の為の「つぶれにくい」車体と、走行安定性の「車体剛性」は同じものではなく、「衝突安全性能」が良いから、車体剛性が良いとは限らない。

ここでプレミオの車両重量を見ると、1.8の2WD、ATで「1220kg」とあるが、これは明らかに(特殊な素材無しでは異常に)軽く、同じクラスの国産車と比べても50~80kgは軽い。

恐らくこの車体重量は燃費の達成の為と、ユーザーの求める動力性能、特に一般道での「加速感」を達成する為に設定されているはずだ。

その上衝突安全性能を与える為、人間の乗っている「キャビン」周りを補強してあるとすれば、エンジンやサスペンションを支える部分の強度は、またサスペンションそのものの強度もそんなに高くできるはずが無い。

この車を、そのまま欧州に持っていって、「アウトバーン」などの高速道路を、それこそ1日で1000kmも走ったら、次の日はこの車に乗りたくなくなるほど酷い事になるだろう。

そういうシーンを、全天候に渡って安全で快適に走れるように作られている車が「レガシィ」なのだが、国内ではそれを望むユーザーは圧倒的に少数派であり、そうでない一般的なユーザーは、プレミオを選んでしまう。

レガシィやホンダのアコードなどは、「走行性能」を上げる為、コストをかけて車を作っているが、収益性が悪く、オマケに売れていない。

反面トヨタはユーザーが望む部分にコストを集中して、切り捨てるところは切り捨てて、収益性が高い(コストが低い)車を開発して、その上売れてしまうのだから、2兆円も儲かるのは当然だと思う。

ちなみに、我々同業者で、トヨタが2兆円もの収益を上げている事に、「たいしたものだね」とはいうものの、そのカラクリを知っているだけに、心から良く思っている人はほとんどいないと言う事は言っておきたい。

かくして「ユーザーの希望をかなえた」プレミオ、アリオンは、順調な売れ行きを示すだろう。

かく言う僕自身も「悪くないな」と思ってしまうのだから、トヨタという企業は本当に凄いと思う。


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