興味がわかない?新型レガシィ [車]

新型レガシィが出てから、結構経ったが、一向にブログに感想を書く気には成れなかったし、今も積極的に評価しようという気はあまり無いというのが正直なところだ。

まあ、自動車という物に対する興味や情熱が、以前ほど無いのだからともいえるが、新型のZなどは、ストレートに「カッコいい」し、ホント、お金に余裕が出来たら素直に欲しいと思う気持ちは、少年の頃にS30のZを見たときとあまり変わっていない。

つまり、それだけレガシィという車に僕個人としては魅力が無いということになる。

まず、その「見てくれ」、つまりエクステリアデザインだが、「スバルらしさ」云々をさも偉そうに述べるつもりは無いが、パットみて正直まったく魅力が無い
この車は何処の国の、何処のメーカーなのか良く判らない、「どこかで見たような」ディテールが、それなりにちりばめられてはいるのだが、手放しで「美しい」とも「カッコいい」とも「力強い」とも、デザインから我々ユーザーに語りかけてくる物が、まったく感じられないからなのかもしれない
かつてのレガシィ、いやスバルのデザインに見られるように明らかに「こりゃぁ変なデザインだな」という、滑稽ともいえる珍妙なディテールは姿をけしているのだが、可といって特に訴えかけるところも無い。
しいて言えば、やはりイメージが「トヨタ的」になってしまったのは意識的なのか、偶然の産物なのか?。

万人にそつなく受ける可能性はあるが、このデザインをして「オンリーワン」では選んではくれないだろう
そういった意味でもトヨタ的なのかもしれない。

二つ目はそのパッケージングで、これは商売上仕方が無いことなのかもしれないが、企画された当時は、金満バブルのアメリカ人のために、アメリカのマーケットを中心に企画されていたはずなので、そのサイズが、アメリカン的に肥大化してしまった

まあ、他のミドルサイズで、世界中のマーケットを持っている車は、内外問わず軒並み巨大化してしまったので、レガシィだけを非難するのはお門違いだとは思うけれども、少なくとも国内で自分が乗るのには、まったくもって「不適格」な大きさだとしか言いようが無い

大体、どのメーカーもサイズの巨大化を、ユーザーの居住性の要求にこたえる為だと、判を押したように答えるが、これはユーザーをとことんコケにしたペテンに過ぎない!。
実は、欧米人の体格の人間が、4人乗って荷物を搭載して、十分満足のいく車内寸法を得るのに、日本の5ナンバーサイズで不可能ではないのだ。
では何故巨大化、特に全幅が広がってしまうのだろう?。
その理由のひとつは「デザイン上の商品価値」で、結局他の車が軒並みおおらかに寸法を自由に使ってデザインされた車と比較すると、確かに幅の狭い車は、貧相に見えるのだ。

そして、これは、メディアなどでも語られていないが、「安く作れる」からだと思っている。
「何を馬鹿な、大きくなればそれだけ高くなるじゃないか」と反論する人もいるだろうが、どっこい、大きくすることで生産コストを下げることが出来る要素は結構多いのだ。

ひとつはエンジンで、5ナンバーの2000ccで、ライバルに負けない動力性能や現在であれば燃費をも達成しようとなると、どうしても複雑で、高度な加給技術を使わなくてはならなくなる。
そのための電子制御や、耐熱性や強度、軽量化を図る為の高価な材料など、非常にコストが掛かる。
それは先代レガシィい達の「シーケンシャルツインターボ」や「チタンタービン」、またはVWのツインチャージエンジンなどを見れば一目瞭然だ。

ところが、そんな複雑なことをしなくとも、「排気量」さえ上げてしまえば、比較的容易に安価に実現できてしまうのである。
同じ280PSのエンジンでも、2000CCの凝ったターボエンジンより、3500CCのV6エンジンの方がはるかにコストが安いのだ。

また、車体もある程度限られた寸法で捩れなどの剛性や、衝突安全性能の為の強度を出して、尚且つ軽量化を図ろうとすると、「ハイテン鋼」やアルミニウムなど、高額な材料を多用しなければならないが、大きく作ると箱構造の断面積が取れるので捩れにくくなったり、衝突のときの「クラッシャブルゾーン」、つまり潰れて衝撃を吸収する空間が大きく取れるので、高価な材料や特殊な設計、溶接技術(これが結構肝心な要素)を使う必要がなくなるので、工場の生産コストまで考えると、かなりのコストダウンを図ることが可能になるはずなのだ。

また操縦性能の面でも、幅、つまりトレットを広げることが出来れば、横安定性、特に横の「ロール剛性」を単純に上げることが出来るので、ばねレートの低い、やわらかいサススプリングが使え、ダンパーの減衰力も下げられるので、乗り心地もよくなり、足回りをやわらかく出来れば、それだけ取り付け面の強度を上げなくともよくなるので、薄い鋼板の仕様や、溶接点の減少など、これまた軽量化とコストダウンに貢献できるのだ。

レガシィを見ると、忠実にその文法に従って欧米での商品性とコストダウンを図った形跡が読み取れてしまうので、「レガシィ、富士重工よおまえもか」という気持ちが湧き上がってしまうのだ。

つまり、5ナンバーや、2000ccの縛りを解いたのは、我々ユーザーの利益ではなく、ひたすらメーカーの「商売上の都合」であるという点が大型化に対する僕の拒否反応の根拠なのだ。

まあ、レガシィ、フロント搭載の水平対抗エンジンの車に関しては、トレットの拡大は「固有の」メリットがある
ご存知のように水平対抗エンジンは幅が広い。
よって、横方向の寸法的制約が多く、たとえば5ナンバーサイズの全幅1700mm以内だと、フロントタイヤのホイールハウスの寸法が足らず。ハンドルの切れ角を大きく取れないというデメリットがあった。
また、エンジンも、現在のように低中速回転でトルクを出して、燃費を向上させようということをしようとしても、エンジンルームの幅の制約で、エンジンシリンダー内のピストンのストローク量を増やすことが物理的に難しくなり、どうしても本来高回転型の「ショートストローク」エンジンになりざるを得なかったので、幅を増やせば、ロングストローク型エンジンを搭載しやすい。

またこれは僕の推定なのだが、今回の売りのひとつの、エンジンを囲うように配置された「クレードル型サブフレーム」は、エンジン内の幅を広げることで実現できた構造で、そのメリットは、NVH(ノイズ・バイブレーション・ハーシュネス)の向上を図る場合、どうしてもフロントサスペンションの取り付けを出来る限りサブフレーム側に移したいが、従来の縦に積み重ねるサブフレーム構造だと、どうしてもサブフレームの厚みが増えてしまい、エンジンの搭載位置が高くなってしまい、低重心が売りの水平対抗エンジンのメリットが低下してしまうので、採用されたのだと思っている。
また、エンジンのマウントを、クレードルの横方向に適切に配置すれば、シンメトリーAWDシステムの弱点のひとつであった、ドライブトレーンの剛性不足による、振動と操縦性への影響を緩和できるのでは?とも推察している。

まあ、そういった意味では、最近の安く作ることしか頭に無く、如何なるエンジニアリング的な挑戦を排除して、電子制御でごまかそうとしている他の国産メーカーに比べれば、技術的にはるかにまじめに取り組んでフルモデルチェンジがなされたともいえなくはないのだ

だがここまでくどくど書いている割に、一向にこの車に興味がわいてこないのは、何故なのか?。
それは「購入対象にならないという一点に尽きるのかもしれない
Zの場合、確かに購入対象にはならないかも知れないが「憧れ」を演出する「スポーツカー」としての「華」がある。

だがレガシィの場合、値段とサイズの問題で、購入対象には絶対になりえず、さりとて、「グランドツアラー」として、アウディに真っ向から立ち向かえるほどの技術的取り組みも無い。
そして「ワゴン」や「アウトバック」などは、SUVとしての取り立てて特出するような技術の採用も特色も無い。

買えないし、憧れないし、驚かないし、賞賛も出来ない・・・・・・・。
これでは興味を持とうにも、持てる要素がないのだ。

その上、「乗ってみれば良さがわかりますよ」という、ここ20年ほど聞かされた呆れるような陳腐なセールストークを聞いたところで>、「乗ってみなければ良さもわからない車や、そんな車しか出せないメーカーが生き残れるほど世の中は甘くないよ」としか返答できないのだ。 これは、ホンダのアコードなんかにもまったく同じことが言えるのだが。 レガシィのかかわらず多くの車に言えることなのだが、単に豊かさ、豪華さ、絶対性能、燃費や安全性能だけでなく、今後のモビリティを真剣に考えた場合、本当に過去の価値観の延長線上で、漫然と資源を大量に使って車を量産して世界中にばら撒くことが正しいことなのか、それを真剣に考えて、「新しい自動車の価値観」を、マーケットに問いかけるような車が無いことに、多いなる危機感を感じるのだ。 これでは>「自動車産業」は、「鉄鋼」や「造船」などと同じく、全盛期の異物として衰退していくのが目に見えてしまわないだろうか。 プリウスやインサイトごときの100年前の潜水艦程度のハイブリット技術をして「未来志向」を語るなどは片腹痛いのだが、もっと新しい価値観を提案できない物だろうか。 たとえばレガシィであれば、築き上げてきたブランドが、「グランドツーリング性能を誇る、居住性と積載性能に優れた本物志向の自動車」strong>という観点で、水平対抗エンジンに強いこだわりをもつのであれば、エンジンレイアウトやパッケージング、ドライブとレーンの全面見直しを図り、「未来志向の最適の技術」をもってして、「今後20年は陳腐化しない」フラッグシップを作り上げるべきではなかったのか!。 無論現在の経済状況や、「トヨタの縛り」の中では絶対に不可能だと認識した上であえて言っているのだが。 RRのレイアウトに固執して、最新技術で最高のスポーツカーを出しているポルシェなどを比較に出して、基本的にスバル1000からレイアウトの変わらないレガシィをして、それがブランドだと嘯く評論かもいるが、僕はそんなヨタ話を相手にしたくない。 以前もブログで書いたが、引き継がれる伝統やブランドは、見かけや形式の問題ではなく、「精神(スピリット)」strong>であると今も確信している。 先のレガシイィの持っているブランドを、我々ユーザーに本当に最適な技術と製品を提供しようと考えた場合、果たして新型レガシィがこの姿で登場したことが、本当に>「スバルの自動車作りの精神」という、他に替えがたい貴重な「ブランド」を継承しているのか否かを、考えてみてもいいのではないだろうか。 これを青臭い精神論と一蹴するか、次世代に生き残るヒントと考えるかは受手の自由だが、従来型のビジネスモデルにしがみついていては、次世代どころか今年末にも路頭に迷いかねないというのが、我々のみに迫っている「現実」だと僕は考えている。 で、もしレガシィが僕の購入候補になるのだとしたら、現行型ではなく、先代の、古臭い4ATでも構わないから、アウトバックの2.5の方が魅力を感じるなぁ、ということになってしまうし、少なくとも国内マーケットは、そういう答えを出してしまう可能性が大きいのではないだろうか。
タグ:レガシィ
nice!(1)  コメント(3)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 1

コメント 3

kanchi

戦闘班長 さん、こんばんは!

読み応えのある記事でした。

親友の父親が富士重の新宿オフィスに勤めていたり、学生時代のアルバイト先の納品先の1つであり、クレーム処理などで伊勢崎や太田の工場に何度も訪れているので、国産では一番しみを持っているメーカが富士重です。

レオーネからレガシーへバトンタッチした頃までは我が道を行く的なスバルらしいクルマ造りをしていたと思います。

レックスにスーパーチャージャー付けたり、CVTを付けてみたり。。。 中間サイズが存在しなかったピープルムーバのカテゴリーにドミンゴを投入したり。。。

私見ですが、水平対向独特のエンジン音をうまく抑えて聞こえにくくした頃から、内装のデザインなどを始めとして、トヨタ的にベクトルの軌道修正をしはじめたような気がします。

諸事情からトヨタでなく富士重のクルマを選択せざるおえない人には喜ばしい事なのかもしれませんが、あえてトヨタでなく富士重を選択する者にとっては、富士重を選択する価値が半減してしまうのではないかと思います。

その後トヨタ傘下になってますますトヨタ化が進んだのでしょうね。

新型レガシーは先代、先々代が作りあげた「のれん」で売れるだけ売って、「のれん」を潰してしまうのかもしれません。
by kanchi (2009-07-12 22:18) 

戦闘班長

結局、生産規模を縮小してでも、特定のユーザーに選ばれる道を選ぶべきだったんだと思います。

これは、他のメーカーにも言えることなんですが、トヨタと同じ車を作っていたのでは、そういう車が好きなユーザーはトヨタしか買わないんですよね。

これらのことは、各メーカーとも、心のある人は気が付いていることなんですけれど、残念ながら「そうではない」人達が、結果として出世して行き、企業の中枢を握り、無意味なまでの「規模」の論理に飲み込まれたようです。

優れた技術を持ちながら、GMに阿る事にか出来なかった「いすゞ」などは、トヨタにも尻尾を振って、挙句の果てにはトヨタの企業論理で切り捨てられるという、惨めなことになっていますし・・・・・。

スバルの場合、WRCを代表とするパフォーマンス路線に傾倒しすぎた辺りから、道を踏み外していったように思います。

生活に、仕事のために、本当に使える良心的な軽自動車や、積雪地帯の人の生活に欠かせない、本格的な走破性を備えた4WDの乗用車など、「この車が必要で、本当に役に立っている」と喜んでいたユーザーを切り捨てて行った代償は、けして少なくないのではと思っています。
by 戦闘班長 (2009-07-13 18:41) 

さとなお

古い記事ですが、全て的を得ているように思います。

私は素人ですので、直感的に感じたことしか言えませんが、現行は「とにかくコストダウン」「ひたすらコストダウン」の産物にしか思えませんね。アメリカでは150万円程度で買えるので、安いお買い得車なのですが、日本では、ずっと高い値付けがなされていますから、その恩恵はありません。
よく「スバルはトヨタ化した」と言われますが、トヨタに全く及びません。現行レガシィの静粛性、内装質感、建付け精度は北米価格が示すとおり、ワンランク下の国産車と比較しても低いレベルです。トヨタは、その辺りは高いレベルを維持していると思います。

走りも凍結路でなければ大手メーカーDセグメントほどの高速安定性やコーナリング性能が得られませんから、GTとしても失格でしょうね。クレードル型サブフレームといっても、この程度の走り?・・・いやむしろ、スバルは、まだフレームを上手く扱えていないのでは?と思っています。

要するにAWDで、中が広いだけ。雪国用の単なる貨物車だと思います。
雪国でアイサイト好きな人が荷物運搬目的に購入する車だと感じます。
by さとなお (2012-05-24 18:04) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。