今こそ「飛行艇」を見直そう [飛行機]

水上飛行機、飛行艇と聞いてピンと来る人はあまり多くは無いだろう。
観光用の単発プロペラ機の水上機は外国でお目にかかることはあるかもしれないが、飛行艇ともなる、ほとんどみる機会は無いはずだ。

かつて、「大西洋横断」や「太平洋横断」などの長距離航路に、滑走路を必要としない、海面や湖面から離発着出来る「舟形」の多発大型機が「飛行艇」だ。
大型の機体だと、当時の技術では、パワーも足りなく、「高揚力装置(フラップ)」も無かったので、長い滑走路が必要とされたが、水面を使えば、事実上滑走距離はいくらでも使えるので、大型機と言えば水上機が当たり前の時代があった。

現代においては、如何なる大型機でも相応の滑走路で飛ばせる事の出来る技術も成熟し、飛行場の整備も十分な為、大型飛行艇が、コマーシャルライナーで使われる事は無くなった。
日本においても、海上自衛隊が、水上に降りられるメリットを生かした「救難機」として、「新明和PS1」を使用しているに過ぎなく、世界的に見てもこの手の大型機はロシアを除いてほとんど見られない。

だが、世界中を見渡せば、何処でも大型輸送機が安心して使える空港を持っているとは限らない。
もしくは、災害や紛争などで滑走路に被害を受ければ、長期間空港の使用は制限される。

日本のような「島国」などは環境を整備すれば、地方の海岸や離島、あるいは内陸の湖沼を持った場所に、最小限の予算と設備で大型機を展開できるメリットは計り知れない事は昔から散々指摘されてきた。
また、災害などによって、陸上の交通網が寸断された海岸地域に、迅速にかつ大規模に救難活動が出来る点において、飛行艇の活用をもっと見直すべきだと言われてきた。

今回の「ハイチ」の震災のように、国家としてインフラが不十分で、マトモな支援も出来ない国内情勢の場所には航続距離の長い大型の輸送飛行艇のようなものがあれば、もっと迅速に救難活動が展開できたのではないだろうか。

日本の場合、如何なる田舎にも、「豪華な設備と、大型ジェット機の降りられる空港」を、状況を無視して整備し続けてしまった事に問題があり「日本航空」の破綻の原因でもある。
水上機と言う、一見レトロで、忘れ去られてしまった「過去のロマン」とも言えるシロモノではあるが、「大量高速輸送」一点張りの過去の航空業界の反省に基づき、柔軟な運用の選択肢の一つとして、見直してみてもいいのではないだろうか。


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kanchi

映画などで未舗装のところをプロペラ機が滑走するのを見ることがあります。 でも操縦桿を握ったことあるものとして、よく滑走できるものだと驚きます。オンボロ小型機と違って重量ある機体だと、車輪の外径も大きくなるので真っ直ぐ走れるものなのかと想像しています。

で、湖面や海水面を滑走する機体ならば、悪天候で波打っていなければ、ご指摘の通り未開の地でも離発着できますよね。

災害救難活動以外にも、防衛的な面からも飛行場から離れた海岸線などにも航空機を展開できることから有用な面がありそうだと思います。
by kanchi (2010-01-25 22:50) 

戦闘班長

大戦前の飛行場は未舗装が珍しくなく、おまけに脚の配列が「尾輪式」でしたから、前は見えないは、真っ直ぐ走らないはでかなりの技量を要求されたと思います。
飛行経験の少ない「ヒヨッコ」が離陸滑走中、及び着陸時に機体を壊しまくったと言う話は聞きます。

飛行艇や水上機は、僕の趣味の部分もありますが、それも含めて、狭い日本で有効に航空機を活用しようとすれば、色々な方法があったとは思うんです。

結局日本のみならず、世界中が機体はおろか、航空管制や安全規格、事業経営、防衛戦略に至るまで、徹底的にアメリカ方式に塗り込まれてしまいましたから、不適合なところが出てくるのは当然ですよね。
by 戦闘班長 (2010-01-27 18:19) 

ロックシップ

自分の会社でもUS-1の分担生産していましたが、しかし…飛行艇を実用運用するとなると、ハードルが高いでしょうなあ。
機体整備現場では、相当海水による影響が考えられそうですし。

戦争中はとにかく索敵、輸送で日米とも必至で運用したのでしょうが、定期運用を安全に長期間とするとなると設備費用は相当かさみそうです。

まず安全に離着水できる穏やかな内海に面した港湾が必要ですよね。
船みたいにずっと浮かべてはおけませんから、スリップがいくつも必要。
上陸した後は機体全体を洗浄・塩抜きできる施設が必要だし…

しかし有事発生時に現場海域で着水できるのはきわめて有効…と、言う訳で実際には海自さんしか運用できないんでしょうねえ。
(岩国基地だけですからねえ)

そうそう、
>>海上自衛隊が、水上に降りられるメリットを生かした「救難機」として、「新明和PS1」を使用している
と、ありましたが、PS1は対潜哨戒艇。
救難機はUS-1、US-1A、US-2の方ですよ。
by ロックシップ (2010-01-30 13:52) 

戦闘班長

ロックシップさんへ

と、現実を直視すると、何故普及しなかったのか良く判りますね(笑)。

であれば、そんな手間のかかる水上機なぞホッポいて、大きい空港たくさん作って、大きい高価な機体がバンバン売れたほうが行政メーカーも都合が良かったのは事実でしょう。

ただ、それは「現実」ではあったかもしれませんが、今現在、本当に真剣に検討しても解決できない事なのでしょうかね?
運用の発想を柔軟に考えて、現在の技術レベルでなら、コマーシャルベースで、長期間使用できる民間水上機の開発及び商用運行は不可能ではないと思いますよ。

では何故出来ないのか?何故真剣に検討できないのか?
一つには、そういった水上機を必要としている、運用に適している地域や国々は、「貧乏」で、商売にならなかったからと言う事があると思います。
また、たとえそのような機体が開発できたとしても、湖沼やフィヨルドが多い北欧や、群島の多い東南アジアなどでニーズがあったとしても、化け物のようなアメリカ航空産業の前には無力であったでしょう。

そういった現実を踏まえて僕があえて、カビの生えたような飛行艇を持ち出したのは、拡大主義、豪華主義、利益優先主義で突き進んできた航空業界は、同じレールの上で前進することは不可能になったという考えがあったからです。
航空業界のみならず、誰かの為の「グローバリゼーション」ではなく、誰ものための「多様性」を模索していく必要があると僕は思っています。

とまあ偉そうに言っていますが、PS1とUS1を間違えているようなレベルなんですけれどね(苦笑)。
by 戦闘班長 (2010-01-31 14:34) 

お名前

水上機がいかに過渡期のものであったか知っていただきたいものです。
今となっては水上機は航空機の進化の途中で、陸上機ではできないことを求めるために開発されました。
今となっては利権云々除いても価値はほぼありません。
第一、フィヨルドにどんだけニーズがあるのでしょうかね?
この様な用途にはヘリもあればツインオッターなどもあります。
それが使われていない理由を考えてください。
あと海自が飛行艇を保有しているのは、ヘリだと哨戒機の乗組員を救助できないからです。
荒削りですがこの辺にしときます。
もっとも調べてください。
by お名前 (2011-04-20 21:43) 

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